BARD1型アップしました


サマージャム’95から’23へ。“それはあれだ!夏のせい”
幾度か前の話で“そう、それは太陽のせい”と言う話を書かせて貰ったが夏の終わりにもう一つ書かせて頂きたいと思う。
前回は“汗による濡れ”を糸の打ち込みを弱く甘くして軽い生地にすることによって通気性が可能とし、化繊混合で伸縮で膝延び、裏シワの補強も兼ね備えたヤコブコーエンをご覧頂いた。
今回は夏のアクティブ感のヤコブコーエンを観て頂きたい。
やはりテーマは“汗による濡れ”の回避になる。
先日の生地は柔らかく織る事に依ってドレープ感、光と揺れが現れる,
それは今までのヤコブコーエンには皆無だった“老け緩る感”だと思う。
しかし本件は“活き張り感”にならないか?細い糸の番手を使用し夏用の汗による濡れに強い生地を織り上げる、前回の様に甘くソフトに織り上げるのではなく強い張りが在るのに薄いオンスのデニムを造り出している。蒸れを通気で勝ろうするのでは無く、張りから来る渇きに依って優ろうとしている。品の在るアダルト的ではなく、生気に満ち積極的なアクティブ感で若さを表現した一品だ。
それと特徴的なディティールは全体のステッチ糸の色と太さとピッチも忘れずに観て欲しい。
今年の夏最後であろうヤコブコーエンのサマージャム’23を忘れずに感じて欲しい。

あとがき
表題のサマージャム’95はスチャダラパーが1995年の7月『5th WHEEL 2 the COACH』からのカットの曲だ。なぜかこの曲をこの商品のことを書こうとした時に思い出した。何か月か前の夏の頭に吞屋で元ネタのボビーハッチャーソンのMontanaを耳にしたからかもしれないがそこはわからない。
僕が初めてちゃんと聴いたのがクラブ帰りの日曜日の始発の列車の中だった、あっ勿論95年の7月のね。一緒に行ったDJ志望の友達が『スチャダラの新譜聴いた?』と言って当時のウォークマン、カセットテープの機械でかけてくれた。左右のイヤホンを片耳ずつふたり並んでつっこんで音を再生した。JRの旧式の地方の田園を走る12編成で電車というよりは汽車の揺れと、線路と車輪の鉄の当たりがゆっくりと緑のベルベットの向かい合わせの座席に刻んでいた。エアコンが今のようにほど良い冷たさではなく、天井から吊るされたクーラーと首振りの扇風機が震えながら温度を下げれるだけ下げる機械的動きをくり返していた。そして窓際にいた僕の額を朝日とは思えないほどの夏の光が差し込んでいた。車内は冷えるだけ冷えた空気と僕をとらえた光との温度の落差は、目をつぶりながらでもわかるほどの僕に今日も猛暑を知らせていた。
『これ初めて聴いた、トラックめっちゃカッケェーじゃん』。
僕は嘘をついた。4月にでたアルバムにも入っていたし深夜ラジオで海外しか流さない渋谷系の歌手が選んでいたので、普段ネイティブタン系?LB系?は聴かない僕でも知っていた。
僕はこの会話を壊したくなかった、この時間を、この空間を。昨夜の爆音で止まない耳鳴りの中で『いつかこういうソウルやジャズの元ネタ、すっとわかる日が来んのかね?』と問いかけた。彼は二、三言葉喋っていたが始めの『うん・・・』だけしかイヤホンなしの片耳では聞き取れなかった。ただ彼も気持ちは一緒だったと思う。初めてに近いジントニックやソルティドッグの後味と残る酔い、クラブのスピーカーからの耳鳴り、友と音楽での会話。彼女なんてまだまだ数年無理だけど同じ学校の奴らが知らない何かをした!ぐらいの想いがあったんだと思う。
電車の中最後に彼とまた行こうそして1曲作ろうと約束をした、だけどその約束はほとんど叶わなかった。本格的な受験の季節が来たのだ。
今回の商品のレヴィユーを書いていてなぜかこの曲を思い出してそれから95年の夏の日のことも思い出した。タランティーノのパルプフィクションやケミカルブラザーズの1stやクープランドのジェネレーションX なんかを観たり聴いたり読んだりした夏だが、あまり憶えてはいない。あとフェンダーのジャガーも買ったのも今思い出した。
ただ7月のあの日のことはしっかり憶えている。それはきっと夜から朝までの街にクラブからのDJによる音楽があり踊りがあり酒や煙草やナニがあって大人の男女がいて友がいて学校以外のハナシをして、すべてがつまっていたからこそ鮮明な光として、僕の中の近くのその辺りにどこにも行かず今でもとどまり続けているのだと思う。

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