前澤の扉 – salotto di guji –
五十嵐トラウザーズ、新しいドレスの始まり

皆様、こんにちは。
gujiアシスタントバイヤーの前澤です。
ここ数年で、ドレスファッションの在り方は確実に変わってきました。
カジュアル化が進み、従来の“正しさ”だけでは成立しなくなってきている。
ただ、その一方で思うのは、ドレスならではの美しさや品の良さは、やはり残していきたいということです。
だからこそこのコンテンツでは、ドレスファッションをもう一度盛り上げていきたい。
そしてもう一つ、単にクラシックをなぞるのではなく、今の時代に合った“新しいドレスのかたち”を提案していきたいと考えています。
この“前澤の扉”では、そういった視点をベースに、自分自身が実際に選んでいるもの、気になっているものを通して、少しずつ形にしていければと思っています。
記念すべき最初のテーマとしてご紹介するのは、五十嵐トラウザーズのストレートモデルです。
この一本から、今のドレススタイルを組み立ててみたいと思います。


新しいドレススタイルを考えるとき、何から変えるべきか。
ジャケットやシャツで変化をつける方法もありますが、僕はまず“パンツ”から見直すべきだと思っています。
理由はシンプルで、パンツが変わると全体のバランスが自然と変わるからです。
従来の細すぎるシルエットでもなく、かといって極端にワイドなわけでもない、その中間にある、今の空気に合ったシルエットをどう作るか。
五十嵐トラウザーズは、その“ちょうどいいところ”を非常に高い精度で提案してくれるブランドです。
ベーシックに見えて、確実に今っぽい、この感覚こそが、新しいドレスの入り口だと思っています。

こちらのストレートモデルは、まさにその象徴的な一本です。
ウールトロピカルの軽やかな素材感、ドライで通気性が良く、春夏でもストレスなく穿けます。
そしてシルエットは、適度にゆとりを持たせたストレートに近いシルエット。
ここが非常に重要で、従来のドレスパンツよりも少しだけ余裕があることで、スタイル全体に抜け感が生まれる。
でも決してルーズには見えず、あくまでドレスとしての品格はしっかり保たれている。
この“ほんの少しの変化”が、結果的にスタイルを今のものに見せてくれるんですよね。
いわば、クラシックを壊さずにアップデートするためのシルエット。
これがこのモデルの本質だと思います。

そして、この絶妙なバランスを成立させているのが、やはり“作り”の部分です。
五十嵐トラウザーズはビスポークを背景に持つブランドなので、そのため設計が最初から立体的なんです。
股ぐりのカーブ、ヒップの収まり、渡りの出方など、どれもが人の体に自然に沿うように設計されている。
だからこそ、少しゆとりのあるシルエットでも、だらしなく見えずに、むしろ非常に品よくまとまっています。
縫製も過度な主張はありませんが、非常に丁寧で安定しているため、シルエットが素直に表現される。
つまり、“頑張っていないのに整って見える”状態を作れるパンツ。
これが、新しいドレススタイルにおいて非常に重要な要素だと思っています。


ドレスファッションは、決して特別なものではなく、本来は日常の中に自然と溶け込むものだと思っています。
ただ、その“自然さ”というのは、何も考えずに成立するものではなく、シルエットや素材、バランスといった要素が積み重なった結果として生まれるものです。
今回ご紹介した五十嵐トラウザーズのストレートモデルは、まさにその“積み重ね”を非常に高い精度で体現している一本だと感じています。
派手なデザインや分かりやすい特徴があるわけではありません。
ですが、穿いたときの収まりの良さや、自然に落ちるシルエット、そして無理なく整う全体のバランス。
この“やりすぎない美しさ”こそが、今の時代におけるドレススタイルの一つの答えだと思っています。
そして、新しいドレスファッションというのは、何かを大きく変えることではなく、こういった基準となるアイテムを軸に、少しずつバランスを更新していくことから生まれるものです。
五十嵐トラウザーズのこの一本は、その“入口”として非常に分かりやすく、そして実用的です。
まずはこのパンツからスタイルを組み立てて、そこからジャケットやシャツを重ねていくことで、自然と今の空気感に合ったドレススタイルが出来上がっていくはずです。
無理に変えるのではなく、自然に変化していく、そのきっかけとして、この一本を選んでいただければと思います。
そしてこの“前澤の扉”では、これからもそういった視点を通して、少しずつ新しいドレスのかたちを提案していきます。


